「金利のある世界」における住宅ローン戦略~日銀の利上げと後悔しない住宅ローン選び~

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執筆者

一般社団法人 住宅購入支援協会 代表理事
住宅購入カウンセラー
ファイナンシャルプランナー(FP)
宅建業従事者
小日向 邦夫 が執筆しました。

2026.07.24

「日銀が追加利上げを実施」「住宅ローン金利が上昇傾向へ」といったニュースを目にするたびに、
「今マイホームを買っても大丈夫だろうか」「住宅ローンの返済が苦しくなったらどうしよう」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

長年続いた超低金利時代を経て、日本はいま本格的に「金利のある世界」へ移行しつつあります。しかし、必要以上に不安になる必要はありません。金利が動く仕組みや、ご自身の家計・働き方・将来設計に合った住宅ローンの考え方を知っておけば、金利上昇局面でも落ち着いて住まいづくりを進めることができます。

本コラムでは、日銀の利上げが住宅ローンにどう影響するのか、変動金利と固定金利の違い、そして金利上昇時代に押さえておきたい具体的な対策まで、わかりやすく解説します。

1. なぜ今、金利が上がっているのか?

まずは、なぜ今、日本で金利が上がり始めているのかを整理しておきましょう。

日本銀行は、長い間、景気を下支えし、物価や賃金の停滞から脱するために、大規模な金融緩和を続けてきました。しかし近年は、物価上昇と賃金上昇が同時に進む局面が見られるようになり、金融政策の正常化が段階的に進められています。その流れのなかで、政策金利も引き上げられ、住宅ローン金利にもじわじわと影響が及び始めています。

住宅ローン金利は、日銀の政策金利と無関係ではありません。ただし、すべての住宅ローンが同じタイミング、同じ幅で動くわけではなく、金利タイプによって影響の受け方が異なります。

変動金利は、多くの金融機関で短期プライムレートなどを参考に見直される仕組みになっており、政策金利の影響を比較的受けやすいタイプです。一方、固定金利、とくに全期間固定型の商品は、長期金利や金融機関の資金調達コストなどの影響を受けやすく、将来の金利見通しを先取りする形で動くことがあります。

そのため、「日銀が利上げを決めた翌日に、すべての住宅ローン金利が一斉に同じだけ上がる」というわけではありません。ニュースの見出しだけで判断するのではなく、どの金利タイプが、何をもとに見直されるのかを理解しておくことが大切です。

2. 変動金利と固定金利の違い

住宅ローン選びで最も悩まれやすいのが、「変動金利にするか、固定金利にするか」という点です。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが絶対に正解というものではありません。

変動金利は、一般的に固定金利よりも借り始めの金利が低く、毎月返済額を抑えやすいのが大きな特徴です。その一方で、将来金利が上昇すれば、返済負担が増える可能性があります。特に、返済期間が長い住宅ローンでは、将来の金利上昇が総返済額に与える影響は小さくありません。

固定金利は、借入時点で一定期間または完済までの金利が確定するため、将来の返済計画が立てやすいのが大きな魅力です。一方で、借り始めの金利は変動金利より高くなるのが一般的で、当初の毎月返済額も大きくなりやすい傾向があります。

2026年7月時点では、変動金利は依然として固定金利より低い水準にある一方、全期間固定金利の代表例であるフラット35は、借入条件によって3%前後の水準となっており、変動金利との差は以前より強く意識されやすくなっています。だからこそ、単に「今はどちらが安いか」ではなく、「将来どこまで金利が上がっても家計が耐えられるか」という視点で考えることが重要です。

3. 変動金利の「5年ルール」「125%ルール」とは?

変動金利型の住宅ローンには、急激な返済額の上昇をやわらげる仕組みを設けている商品があります。代表的なのが「5年ルール」と「125%ルール」です。

5年ルールとは、金利が変動しても、毎月の返済額は5年間据え置くという仕組みです。125%ルールとは、返済額の見直し時に、前回の返済額の1.25倍を上限とする考え方です。これらのルールがあると、急な金利上昇があっても家計へのショックをある程度抑えやすくなります。

ただし、ここで注意したいのは、これらのルールはすべての住宅ローンに共通しているわけではないという点です。金融機関や返済方式によっては適用されない場合もあります。また、返済額が据え置かれていても、実際には利息負担が増えており、元金の減り方が遅くなることがあります。金利上昇が大きい場合には、返済額の中で利息の割合が増え、将来の負担が後ろにずれ込む可能性もあります。

そのため、「ルールがあるから安心」と考えるのではなく、「ルールがあっても金利上昇の影響そのものはなくならない」と理解しておくことが大切です。

4. 金利が上がると返済額はどれくらい変わる?

金利上昇の影響をイメージしやすくするために、具体例で見てみましょう。

【試算条件】

  • 借入額:4,000万円
  • 返済期間:35年(元利均等返済・ボーナス払いなし)
  • パターンA(金利 1.0%)
    • 毎月返済額:約 112,900円
    • 総返済額:約 4,742万円
  • パターンB(金利 1.5%)
    • 毎月返済額:約 122,400円(パターンAより +約 9,500円/月
    • 総返済額:約 5,141万円(パターンAより +約 399万円
  • パターンC(金利 2.0%)
    • 毎月返済額:約 132,500円(パターンAより +約 19,600円/月
    • 総返済額:約 5,565万円(パターンAより +約 823万円

このように、金利差が0.5%から1.0%程度でも、住宅ローンの返済期間が長い分、毎月の返済額や総返済額には大きな差が出ます。大切なのは、「今の金利なら払える」ではなく、「将来少し上がっても無理なく払い続けられるか」を確認することです。

5. 変動金利と固定金利、どちらを選ぶべき?

この問いに対する唯一の正解はありません。大切なのは、ご家庭にとって何がリスクなのかを明確にすることです。

たとえば、毎月の返済額をできるだけ抑えたい方や、今後も収入増が見込める方、繰上返済を計画的に進められる方は、変動金利が選択肢になりやすいでしょう。ただし、将来の金利上昇による負担増を受け止められるだけの家計の余力は欠かせません。

一方で、教育費のピーク時期が見えている方、家計の変動要因をできるだけ減らしたい方、共働きから単独収入になる可能性がある方などは、固定金利との相性が良い場合があります。固定金利は当初負担こそ重くなりやすいものの、「返済額が変わらない安心感」に価値を感じる方には向いています。

また、変動か固定かの二択で考えず、借入額の一部を固定、残りを変動にする「ミックスローン」を検討するのも一つの方法です。低金利のメリットと、金利上昇への備えをバランスよく取り入れたい方には有効な考え方です。

6. 金利上昇時代に備える5つの具体策

金利上昇局面で大切なのは、金利を完璧に予測することではなく、「上がっても困りにくい家計と借り方」をつくることです。実践しやすい対策を5つご紹介します。

①借りられる額ではなく、無理なく返せる額で考える
金融機関の審査で借りられる金額と、実際に家計として無理なく返せる金額は同じではありません。とくに金利上昇局面では、借入可能額いっぱいまで借りるのではなく、少し余裕を持った予算設定が重要です。将来、金利が0.5%〜1.0%程度上がっても問題なく返済できるかを事前に確認しておきましょう。

②手元資金を残しておく
住宅購入時に自己資金をすべて頭金に回してしまうと、想定外の支出や将来の金利上昇に対応しにくくなります。生活予備費や教育費、修繕費、万一の病気や収入減に備える資金は、できるだけ手元に確保しておくことが大切です。一般的には、生活費の6か月〜1年分程度を目安に考えると安心です。

③金利上昇シミュレーションをしておく
変動金利を選ぶ場合は、今の返済額だけでなく、金利が0.5%上がった場合、1.0%上がった場合の返済額も試算しておきましょう。その差額を見て、「毎月この増加分を吸収できるか」「事前に積み立てられるか」を確認することが重要です。

④早めの繰上返済も視野に入れる
変動金利で借りる場合、将来金利が上がる前に元金を減らしておくことは有効な対策です。もちろん、手元資金を減らしすぎるのは禁物ですが、余裕資金ができたときに繰上返済を使えるようにしておくと、金利上昇局面でも選択肢が広がります。

⑤金利だけでなく団信の内容も含めて比較する
住宅ローン選びでは、つい金利だけに目が向きがちですが、団体信用生命保険の保障内容も非常に重要です。がん保障や3大疾病保障などを付けられる商品もありますが、こうした特約には金利上乗せや追加コストがかかることがあります。保障内容、支払い条件、上乗せ金利の有無を確認し、生命保険全体とのバランスで判断しましょう。

住宅専門ファイナンシャルプランナーの視点

「金利が上がっているなら、今は買わないほうがいいのでは」と考える方もいらっしゃいます。しかし、住宅購入のタイミングは金利だけで決まるものではありません。家賃の支払い、家族構成の変化、子どもの進学、通勤環境、住宅価格の動向など、判断材料は多岐にわたります。

また、今後さらに金利が上がる可能性がある一方で、住宅価格や建築コストが下がるとは限りません。将来を正確に当てることは難しいからこそ、「今の自分たちにとって無理のない計画かどうか」で判断することが重要です。

住宅ローン選びでは、「最も得をする方法」を追いかけるより、「失敗しにくい方法」を選ぶほうが、結果として満足度の高い家づくりにつながることが少なくありません。

日銀の利上げによって、日本は本格的な「金利のある世界」に入りつつあります。これから住宅ローンを組む方にとって、金利の動きはこれまで以上に重要なテーマになるでしょう。

ただし、必要以上に恐れる必要はありません。変動金利と固定金利の違いを理解し、金利が上がった場合の返済額を事前にシミュレーションし、手元資金や家計の余力を意識した資金計画を立てておけば、リスクは十分にコントロールできます。

大切なのは、「どちらの金利タイプが正解か」を探すことではなく、「自分たちの暮らしに合った借り方は何か」を見極めることです。住宅ローンは、単なる借入商品ではなく、これからの暮らしを支える長期のパートナーです。

金利のある時代だからこそ、目先の数字だけに振り回されず、ライフプラン全体を見据えて、納得できる選択をしていきましょう。

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