住宅ローン残債4,000万円・残り30年ですが変動金利が1%になりました。固定金利へ借り換えるのは賢い選択でしょうか?
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執筆者
一般社団法人 住宅購入支援協会 代表理事
住宅購入カウンセラー
ファイナンシャルプランナー(FP)
宅建業従事者
小日向 邦夫 が執筆しました。

住宅ローンの金利上昇に関するニュースが増える中、ご自身の適用金利が「1%」まで上がると、「このまま変動金利で大丈夫だろうか」と不安になる方は少なくありません。実際、日本銀行はマイナス金利政策を終了し、金融政策の枠組みを見直しています。また、一部の金融機関では、短期プライムレートの引き上げに伴って住宅ローン変動金利の基準金利を見直す動きが活発になっています。これまでのように「超低金利が長く続く」とは言い切りにくい環境になってきました。
もちろん、固定金利への借り換えを検討すること自体は、とても自然で有力な選択肢の一つです。しかし、借り換えは「安心」を得る代わりに、目先の返済負担や諸費用が増えることも多く、単純に「固定のほうが正解」とは言えません。今回は、残債4,000万円・残期間30年・変動金利1.0%の住宅ローンについて、比較のために固定金利3.2%・諸費用110万円という前提で、借り換えの考え方を整理してみます。
※固定金利3.2%は、2026年6月時点の【フラット35】21〜35年の金利3.210%、を参考としています。
固定金利3.2%へ借り換えるメリット
固定金利へ借り換える最大のメリットは、将来の返済額を確定できる安心感にあります。今後、市場金利や住宅ローン金利がさらに上昇しても、借り換え後の適用金利が固定されていれば、毎月の返済額は原則として変わりません。教育費や老後資金など、今後のライフイベントを見据えて家計を管理したい方にとっては、この「見通しの立てやすさ」は大きな価値があります。
特に、今後の収入増加をあまり見込んでいないご家庭や、将来の返済額上昇が家計に強いストレスを与えそうなご家庭では、固定化によって資金計画を安定させる意味は小さくありません。「金利が上がるかもしれない」という不確実性を減らしたい場合、固定金利は有力な防衛策になります。
固定金利3.2%へ借り換えるデメリット
一方で、固定金利への借り換えには、目先の負担増という明確なデメリットがあります。今回の前提では、変動1.0%から固定3.2%へ移ることで、毎月返済額はかなり増えます。加えて、借り換え時には事務手数料、保証料・保証事務手数料、登録免許税、司法書士報酬、抵当権抹消費用などの諸費用が発生します。借換時の諸費用110万円という設定は、4,000万円規模の借り換え時の試算となっています。
つまり、固定金利への借り換えは、「安心を買う代わりに、今からコストを多く負担する選択」だと言えます。このコスト負担をどう評価するかが、判断の分かれ目です。
まず確認したい、シンプルな試算
今回の前提で、元利均等返済として単純比較すると、返済イメージは次のようになります。
| 項目 | 変動金利のまま(年1.0%が続くと仮定) | 固定金利へ借り換え(年3.2%) |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 約12.9万円 | 約17.3万円 |
| 30年間の総返済額 | 約4,632万円 | 約6,228万円 |
| 諸費用 | なし | 約110万円 |
| 総負担額の目安 | 約4,632万円 | 約6,338万円 |
この単純比較では、固定3.2%へ借り換えた場合、変動1.0%がそのまま続くケースに比べて、総額で約1,700万円前後の負担増になります。したがって、「今すぐ固定へ借り換えるべき」と結論づけるには、この追加コストに見合うだけの将来リスクがあるかを冷静に見極める必要があります。
判断のポイントは「平均金利」よりも「上がり方」と「家計耐性」
ここで大事なのは、変動金利が今後どこまで、いつ、どんなペースで上がるのかです。単純計算では、今回の前提における諸費用込みの損益分岐は、概ね年3.3%台が一つの目安になります。つまり、今後30年間の実質的な負担がそれを上回るような推移になれば、固定3.2%への借り換えが相対的に有利になる可能性があります。
ただし、ここで注意したいのは、住宅ローンの変動金利は「30年ずっと同じ金利で推移する」ような単純な商品ではないことです。実際には、金利が上がるタイミング、どの程度の期間高止まりするか、借入先のルール、返済方式などによって負担感は大きく変わります。したがって、「将来の平均金利が何%なら得か」という見方だけでなく、家計がどこまで返済増に耐えられるかという視点で考えることが重要です。
「金利が上がると毎月返済がすぐ急増する」とは限らない
変動金利を不安に感じる方がよく誤解しやすいのが、「金利が上がったら、翌月から毎月返済額が一気に跳ね上がる」と考えてしまうことです。実際には、主要銀行の一部では、元利均等返済の変動金利型に5年ルールや125%ルールが設けられており、金利が上昇しても毎月返済額がすぐには増えない仕組みになっています。
ただし、このルールは『返済を免除してくれるわけではない』点に注意が必要です。毎月の支払額が増えなくても、内訳の利息割合が増えて元金が減りにくくなったり、最終返済時に『未払利息』として一括請求されたりするリスクがあります。
借り換えが向いている人、向いていない人
固定金利への借り換えが向いているのは、まず、将来の返済額上昇を家計で吸収しにくい人です。たとえば、教育費のピークを控えている、共働き収入の変動可能性がある、毎月の家計にあまり余裕がない、といった場合には、多少コストが増えても返済額を確定させる意味があります。将来の「もし金利が大きく上がったら」という不安を減らしたい方にとっても、固定金利は合理的な選択になり得ます。
一方で、変動金利のままでもよい可能性があるのは、十分な手元資金があり、金利上昇時に繰り上げ返済で対応できる人です。また、家計にある程度の余力があり、返済額の上昇や元金減少ペースの鈍化にも柔軟に対応できる場合には、低金利のメリットをしばらく享受し続ける考え方にも合理性があります。
住宅専門ファイナンシャルプランナーの視点
損得だけでなく、「安心にいくら払えるか」で考える
今回の前提では、固定3.2%への借り換えは、毎月返済額と総負担額の両方を押し上げるため、金利上昇への備えとしては有効でも、経済合理性だけで即断できる選択ではありません。単純比較では、諸費用込みの損益分岐は概ね年3.3%台が目安ですが、実際には金利上昇の時期やペース、金融機関ごとの返済ルールによって結果は変わります。
そのため、最終的には「どちらが得か」だけでなく、どちらが自分たちの家計にとって安心できるかで判断するのが現実的です。借り換えを検討するなら、「金利が何%まで上がったら固定の総負担を上回るのか」「5年後・10年後に金利が上がった場合の返済額や残高はどう変わるのか」といった複数パターンのシミュレーションを行い、貯蓄計画や今後の支出予定とあわせて比較してみることをおすすめします。
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